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【落乱】花立つ人

第2章 ほうっておけない質(たち)なんです、の段。


「「うゎぁぁぁぁ」」

 二人は立ち止まりその場で身をちぢ込ませた。
 ずるずるずる…ぽんぽん。と肩を叩かれて。

「「ひえええぇぇぇ!!」」
「うわっ」

 大声を出す二人に背後の人物は驚いて仰け反る。

「「あ、きり丸ひさしぶりー」」
「お、おぉ」
 切り替えの早さにきり丸はつんのめった。

「何してんだよこんなとこで」
「ぼくたち、きり丸のところに行こうと思ってたんだ」
「おれのところ?」
「うん! 宿題一緒にやろー」
「おぉ、いいぜ」
「ところでそれは…」
「ああ、これか?」
 きり丸の手には縄が握られており、その縄の先には大きな桶。「ねぇねぇ」
 どうやらずるずるという音は、この桶を引きずる音だったようだ。
「第三協栄丸さんから魚が届いたんで、隣町まで売りに行ってたんだ」「ねぇねぇ」
「兵庫第三協栄丸さんは兵庫水軍のお頭です。色々あって仲良くしています」
「乱太郎、誰に向かってしゃべってるんだ?」「ねぇねぇ」
「画面の向こうの読者だよ」
 乱太郎がほら、と指差す方向をきり丸が見る。
(これを読んでいるあなたは今、きり丸と目が合っているはずです)

「ねぇってばぁ!! ムシしないでよぉ!!」
 鼻水と涙を垂れ流しながらしんべヱが訴える。
「ごめんごめん。だって、ねぇ」
「ああ…アレだろ?」
「気づいてたの?」
「当たり前だろ…っておい、しんべヱ、あんまり見るなよ」
 三人はそう言ってアレに背を向ける。

「アレ、どうする?」
 またやっかいなことになりそうだぜ、ときり丸は顔をしかめる。
「女の人…かなぁ?」

 ひそひそ話をする三人より五間(ごけん、約9m)ほど離れたところに人が倒れていた。
 髪は黒くて長く、市女笠が近くに転がっている。
 着物の色や柄からして、かなり若そうだ。


「どうするって言ったって…倒れてるんだもん、助けないわけにいかないよ」
「ちょっと待て、乱太郎。よーく考えてみろよ、これまで"若い女性"ってやつが倒れてたことがあるか?」
「ない」
 乱太郎は即答した。
「おじーちゃんかおばーちゃんばっかりだよね」
「しんべヱ、それだけじゃないよ。ヘンな忍者かヘンな海賊かヘンな剣豪も、だよ」
「「怪しい…」」
 乱太郎ときり丸は顔を見合わせる。
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