第2章 ほうっておけない質(たち)なんです、の段。
ボサボサ頭にまん丸メガネの少年は小さな風呂敷包みを背負って歩いていた。
「読者の皆様、初めまして。忍術学園一年は組の乱太郎です」
乱太郎は一旦歩みを止め、手をついて頭を下げる。
「普段は漫画の世界で活動しています。小説の世界では何かとわかりにくい表現があるかと思いますがなにとぞよろしくお願い申し上げます」
そして再びてくてく歩き出した。
「ただいまぼくたちは夏休み真っ最中です。どうしてぼくが家を出てこんなあぜ道を歩いているかといいますと、それは…」
「らんたろぉぉ~~~」
「あっしんべヱ!」
やってきたのはずんぐりぽっちゃりまるまるとした男の子。
「乱太郎、ひさしぶり~」
「久しぶり、しんべヱ。あ、こちらは同じく一年は組のしんべヱです。貿易商の"福富屋"の長男です」
「わぁ説明くさいセリフありがとう~」
太い眉毛に小さい目が点々とした、のっぺり顔である。
「しんべヱ、これからどこに行くの?」
「ぼく、乱太郎のところへ行こうと思ってたの」
「ぼくのところ? あ、もしかして」
「うん、夏休みの宿題を写させてもらおうと思って」
しんべヱはにっこり笑ってドリルを取り出した。
「やっぱり。でもだめだよ」
「どうしてぇ?」
「だって――」
「ぼくも宿題やってないんだ」
ペカーッと後ろに光を背負って乱太郎は胸を張る。
(威張ることじゃないだろう…by土井先生)
「あ、なるほど~」
「だから、きり丸のところへ行こうと思って」
ということで、乱太郎としんべヱは揃ってきり丸のところへ行くことになった。
きり丸は戦で家と家族を亡くしたため、様々なアルバイトで生計を立てている。
長期休暇期間は土井先生の家にお世話になっているのである。
てくてくてくてく。と乱太郎。
とことことことこ。としんべヱ。
ずるずるずるずる。????
「ねぇしんベヱ。変な音がしない?」
「する…」
ずるずるずるずる。
その音は二人の背後に迫っていた。