第8章 知らない方が幸せです、の段。
「椿さん、こんなのも買うんだ…なんか、かわいそう…」
しんべヱのしみじみとした呟きに土井先生はまた一つため息をついた。
いつの間に撮られたのかわからないが、全校生徒中に協力者がいることは確かだった。
なぜなら、授業中のものはもちろん、食堂の中、職員室、学園長と話しているところなどなど…。
ドクタケ城に侵入して捕まったは組を救出する際に来ていたドクタケ忍者の衣装を着ているもの、足軽兵の格好をしているものもある。
椿は思っている以上にきり丸にお金を払っているに違いなかった。
「……」
土井先生は口元に手を当てて少し考え込んだ…かと思ったが、道を間違えそうになる三人組を慌てて追いかけた。
椿は落ち葉だらけの忍術学園の前を掃いていた。
二日ほど前に出て行った土井先生と乱太郎たちがそろそろ返ってくるはずなのだ。
椿は懐からきり丸から買い取った土井先生のブロマイドを取り出す。
「…格好良い…」
最近の一番のお気に入りは、忍び頭巾を被る前に髪を結わえるため紐を唇に咥えている土井先生のブロマイド。
この紐になりたい。
そうすれば、毎日土井先生の傍に居られる。
せっかく忍術学園に就職したのに、土井先生はすぐに校外実習とか校外補習では組たちと出ていってしまう。
(私がくの一だったら…ついて行けるのになぁ…)
中途半端なくの一ではダメだ。
だってあのは組の面倒を見なくてはならない。
いらないことばっかりして、余計な手間を先生方にかけさせる。
それでも、いつも大きな事故もなく…爆発事故はたまにあるけれど、皆ちゃんと忍術学園に帰ってくる。
それは土井先生をはじめ優秀な先生や上級生がいるからだ。
「……早く、会いたいな…」
その日も、四人は帰ってこなかった。
椿は枕の下に、寝巻き姿の土井先生のブロマイドを入れて眠る。
(良い夢が見られますように…)