第8章 知らない方が幸せです、の段。
「しかしっ!! 簡単に秘密を漏らすとは、忍者として失格だっっっ!!!」
見事にまん丸なタンコブがしんべヱの頭にできあがった。
あ~ん、と目を潤ませるが、きり丸は冷たい。
「自業自得だぜ」
「なんか意味が違うような…」
乱太郎は苦笑いするしかなかった。
「まったく…きり丸もきり丸だが、椿くんも椿くんだな」
はぁ、と大きなため息をつく土井先生だが、そこでふと気づく。
「…お前、一体どれだけ椿くんからお金を貰ったんだ?」
「……よ、よーし、昼飯も食ったことだし、しゅっぱーつしんこーーー!!!」
「おー!!」
「おー!」
「ごまかすな!」
歩き出そうとするきり丸の首根っこを掴んで、土井先生は睨みをきかせた。
「ちぇー」
「ちぇー、じゃない!」
きり丸を揺さぶると、懐からドサドサと紙束が出てきた。
「あっ」
「んん?」
きり丸が拾うより早く、土井先生がそれを手にした。
「あー…」
「あーあ…」
「あらら…」
きり丸、乱太郎、しんべヱがそれぞれ声を上げる。
土井先生は、紙束をパラパラと捲ってから、それはそれは大きなため息をついて。
「きり丸ーーーー!!!!!!」
「きりちゃーん。そろそろ行こうよ」
大目玉と拳骨を喰らった上、これから椿に売るはずだったブロマイドを取り上げられたきり丸は拗ねていた。
思いっきり拗ねて、途中にある大木にくっついて離れようとしない。
「どうしましょう、せんせー」
「どうするもこうするもないだろう…」
ひそひそ、と土井先生が乱太郎に耳打ちする。
「早く行かないと、休みが終わっちゃってアルバイトできなくなっちゃ」
「さぁ行こう!」
ズコー。
乱太郎が言い終わるよりも早くきり丸が先頭を歩き出すので、三人はずっこけた。
「ところで土井先生。きり丸が持ってたブロマイドってどんなのですか?」
「…お前、見たいのか?」
しんべヱの問いに、土井先生が嫌そうな顔をする。
「見たいです」
「…一枚だけな」
「わーい……あ…」
土井先生が見せてくれたのは、子守りバイト中におしめを変えている場面だった。