第7章 皆揃っていただきます、の段。
どうやら以前にナメクジの墓を作ることを快諾してくれた――利吉曰く、本当はそんな場合じゃなかったけど押し問答する時間が勿体無いから『迅速に!』と指示をしただけ――こともあり、喜三太は利吉を慕っている。
「りきちさん…? どなたですか?」
初めて聞く名前だったのか、椿が山田先生の方を見る。
山田先生が口を開く前に、喜三太がにっこり笑って「山田先生の息子さんです!」と応えた。
「全然似てないよね」
「ああ。弱冠十八歳にしてフリーの売れっ子忍者なんだぜ。儲かってるだろうなぁ」
乱太郎ときり丸が続けてそう言えば、最後にしんべヱがうんうん、と頷いてこう付け足した。
「しかも超イケメン!」
自分のことでもないのにドヤ顔をした。
「…"イケメン"?」
「「「あ……」」」
椿がぽろりと零した単語に三人組は一時停止する。
相当な面食いな椿にとって"イケメン"という言葉はいろんな意味で地雷だ。
(ねぇちょっと!この場合どうなるの?)
(も、もしかして利吉さんにあっさり乗り換えちゃったりするのかな)
(マジかよー。それはそれで困る…あぁ、でも利吉さんのブロマイドはあるぜ)
(きりちゃん、なんでそんなもの持ってるのさ)
三人は顔を突き合わせて思いっきりひそひそ話をする。
「お前達…そういうのは隠れてやるもんだぞ」
「でも山田先生――」
「気持ちはわからんでもない」
「「「ですよね!」」」
ちらり、と四人は土井先生を見た。
「……なんだ、その目は」
「「「「い~え~何でもありません」」」」
「山田先生まで一緒になって何やってるんですか」
まったく…とため息をつく土井先生の心境とはいかに。
ぼんやりとしたような面持ちで箸を進める椿を三人組と山田先生は複雑な思いで見つめるのであった。
~おわり~