第7章 皆揃っていただきます、の段。
「ボク土井先生の隣ー!」
喜三太がにっこり笑って平天の足りない席に座った土井先生の隣に腰を下ろそうとする。
あっ…と椿は思ったそのとき。
「ダメだよ喜三太~」
しんべヱが待ったをかけた。
椿だけではなく乱太郎ときり丸がおおお?と期待を込めた視線を向けるが、しかし。
「そっちの方がお魚が大きいからボクの席と交換して?」
「「「だぁぁぁ!!」」」
三人はずっこけた。
「椿さん、ちゃんと自分でここに座りたいって意思表示するのが一番良いと思うんですけど」
「や、でもそれは恥ずかしいし…」
「はいはいはいはい、椿さんはこっちね。オレはその隣!」
きり丸がぐいぐいと椿の背中を押し、土井先生の向かいの席に座らせる。
その隣に座ったのは、言わずもがな。
(今度一品オマケしてくださいね!)
(う、うん、ありがとう…)
この機を逃してはならない。
何か手助けをするごとに食堂の小鉢一品を強請る算段だ。
きり丸としては、さっさと椿と土井先生がくっつけばいいと思っている。
なぜかと言うと、それはもちろんバイトの手が増えるからだ。
洗濯だって子守だって倍引き受けられる。
それに、二人の時間を作ってあげる、と言えば椿からお駄賃が貰えるであろう。
家を追い出されるかもしれない、という不安は全く無いわけじゃないけれど。
だったらだったで、松千代先生の家にお世話になってやる!ときり丸はしたたかであった。
「お前たち、ちゃんと手は洗ったか?」
「「「「はーい」」」」
お決まりのやり取りではあるが、山田先生はいつもそれを複雑な気持ちで見ていた。
(任務中の忍びにとって水は貴重なもの…食事前の手洗いを癖付けさせるのはどうなのかねぇ…)
籠城戦の模擬実習を行ったときも、貴重な水を洗顔や歯磨きに使おうとしていたことを思い出す。
土井先生のお母さん的な発言がは組たちに染み付いてしまったのではないかと山田先生は考えているのだが。
(ま、いいか…)