第7章 皆揃っていただきます、の段。
「ご飯は皆で食べよう」
「…え?」
「いつも私たちが食べた後、食堂のおばちゃんと一緒にご飯を食べているだろう? でも休みの間はおばちゃんがいないんだし、私たちは授業を終えたら一緒に来るから、皆で一緒に食べよう」
7人しかいないんだし、メニューも一つで大丈夫だよ、と土井先生は言ってくれた。
「――はい!」
土井先生と一緒にご飯が食べられる!
椿は嬉しそうに頷いた。
そうして、あっという間に秋休みになった。
食堂のおばちゃんは少し心配そうにしていたが、それを払拭させるかのような明るい笑顔で送り出す。
普段であれば、事務の仕事の手伝いや学園内の清掃を行うが、今日からは食堂の仕事だけ。
(…あれ? ってことは、掃除の振りして補習授業覗きに行けないのか)
不覚。
椿はがっくりと肩を落とした。
(でも! 今日は皆と一緒にご飯だし。土井先生の隣か前に座りたいな!)
むふー、と鼻息荒く拳を握り締める。
(あ…でも皆先に座っちゃうから無理かな…)
しょぼん、と眉毛がハの字になる。
(一人一人専用のお箸を置いたら…!)
再びグッと上がる拳。
(って、ここ食堂だし。専用のお箸なんかないし…)
ずーん、と椿は暗い気持ちになった。
「…椿くんはさっきから何やってるんだ?」
百面相をする椿を遠巻きに見ていた土井先生が首を傾げる。
その問いに答えたのはきり丸だった。
「どーせ土井せんせーのこと考えてるんですって」
「私のこと?」
「そーですよ。大体こんな感じだと思います」
そう言ってきり丸は椿の方を見た。
椿がにっこり笑っている。
「土井せんせー、ご飯美味しいって言ってくれるかなぁ」
笑った顔が曇る。
「今日に限って失敗したらどうしよう!」
曇った顔がぽっと赤くなった。
「いや、もしかしたら凄く美味しくて…」
赤くなった顔を両手で覆う。
「お嫁さんに来てくれ、って言われちゃったらどうしよう!!」
そして我に返ったように頭を振る。
「そんなわけないか~」
椿はそのまま食堂の中へ入って行った。
「以上、全てアフレコきり丸でした!」
「お前な…」