第7章 皆揃っていただきます、の段。
もうすぐ秋休みに入ろうという頃だった。
家が農家の生徒のための休みなのだが、一部の生徒は忍術学園に残るらしい。
椿は秋休み中にどれだけの人数が学園内に残るのか、食堂のおばちゃんに頼まれて各学年の担任の先生の元へ訪れた。
多くの生徒が家に帰るという話の中、居残り補習のために家に帰れない生徒が四人いた。
は組の乱太郎、きり丸、しんべヱ、喜三太である。
彼らのせいで土井先生、山田先生はまた家に帰れなくなってしまったという。
「ってことは、学園に残るのは学園長と山田先生、土井先生、それからは組の四人…で七人か」
土井先生が残るなら私も残りたいなぁ…と思いながら椿は食堂のおばちゃんのもとへ戻った。
「――と、いうことで、全部で七人が残るそうです」
「七人ね。…アンタはどうするんだい?」
「私は…できたら残りたいんですけど、仕事も特になさそうで…」
「そうかい…。なら、アタシの代わりに皆のご飯の面倒見てくれないかい?」
おばちゃんはしばらく会っていない友人に会いに行きたいのだと言う。
「お家には帰らないんですか?」
「アタシの家は遠くてねぇ。秋休みだけじゃ時間が足りないんだよ」
「そうなんですか。わかりました。私で良ければおばちゃんの代役勤めさせていただきます」
「それじゃ、早速学園長に報告してくるよ」
「はい、お願いします」
おばちゃんが食堂を出て行ってすぐ。
椿はぐっ、とガッツポーズをした。
(やった! あ…兄さんに言わなくちゃ)
椿は兄である松千代万を探して、職員室へと向かった。
「失礼します。椿です。松千代先生いらっしゃいますか?」
障子を開ける前に声を掛ける。
応えが無いので、椿はスッと障子を開けた。
「あ、椿くん。松千代先生なら今さっき出て行ったところだよ」
「そうですか。ここで待たせていただいても?」
「ああ、構わないよ」
(土井先生だ! 私ってばツイてる! 兄さん、すぐ帰ってこないでよ!!)
職員室には土井先生しかいなかった。
椿は他に誰も戻ってきませんように…!と切に願った。