第3章 火薬庫内は火気厳禁、の段。
「一番手が足りとらん委員会はどこじゃったかの」
ぶふぉぶふぉと鼻を鳴らしながら、じーさんだかばーさんだか、外見では判断がつかない学園長が山田先生に尋ねる。
「火薬委員会ですな。あすこは委員長がおらず、五年の九々知が委員長代理をやっております。メンバーもまだ四人です」
「そうかそうか。なら、椿さんに補佐をお願いするとしようかの。伝蔵、伝えておいてくれるか」
「はっ、かしこまりました」
「ということで、椿くん。今から土井先生のところへ行ってきなさい」
「はい! ありがとうございます!!」
山田先生から火薬委員会の補助を、という話を聞いて椿は一瞬で舞い上がった。
(土井先生と同じ委員会だなんて、嬉しい!)
「…大丈夫かのぅ…」
ぽわ、と頬を染めつつ駆け足で土井先生の部屋へ向かう椿を山田先生は心配そうに見送った。
「土井先生、椿です」
障子越しに声をかければ、ややあってからスッと障子が開かれた。
「こんにちは、土井先生」
「やぁ、椿くん。何かあったのかい?」
「あの、学園長の命を受けまして、本日より火薬委員会の補助を務めることになりました」
「椿くんが?火薬委員会の補助?」
「はい。どうぞよろしくお願いします」
頭を下げる椿だったが、土井先生の表情は芳しくない。
「あの…何か不具合でも……?」
「あぁ、いや…人手が足りないのは確かなんだが、女の子の椿くんにお願いするのはどうかと思ってね。火薬壺は重いし、実験をするのには危険を伴うし…」
「重いのは平気です! 兄と同じく力持ちですし、それが自慢ですから!」
手伝わなくていいよ、なんて言われたらどうしよう。
腕組みをして思案する土井先生に、椿は慌ててそう言った。
「でもあの…実験、というのは??」
そんなことはまったく聞いていない。
火薬の実験、となれば危険であろうことは想像はつくのだが。