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【落乱】花立つ人

第2章 ほうっておけない質(たち)なんです、の段。


「お気づきになられましたか」
「え、と…あ……」

 土井先生と目があって、ぽっ、と女性の頬が染まる。

「起き上がれますか」
「は、はい…あのここは…?」
 体を起こそうとする女性の背に手を添えながら、土井先生は白湯を差し出した。
「まずはこれを。あなたが道で倒れているのをこの子たちが見つけたんです」
「まぁ…とんだご迷惑をおかけしました」
 ぺこ、と頭を下げて女性は三人組に「ありがとう」と微笑みかけた。

「おねえさん、どうしてあんなところで倒れてたの?」
「ええっと…覚えてるのは、何かにつまづいてこけそうになって…もう気づいたら今ここに」
「なんだ、単にどんくさいだけか」
「こら、きり丸」
 たしなめる声に、きり丸はべっと舌を出す。

「おねえさんはどこに行くところだったの? お茶屋さん?」
 しんべヱの問いに、女性はハッとして立ち上がろうとするが、ふらりと立ちくらみがして布団にうずくまった。
「いきなり立ったら危ないですよ。さっきまで倒れてたんですから。ぼく、乱太郎です。おねえさんのお名前は?」
「あ…私、椿です。松千代椿です」
「椿さん。こっちがきり丸で、こっちがしんべヱです。それからこちらが…」
「土井です。椿さん、どこに行かれる予定だったのですか?」
 再び土井先生に視線が向けられると、またぽっと椿の頬が赤くなった。

「あ、あの…家に帰る途中だったのです。女中の仕事が突然なくなってしまって…」
「女中の仕事がなくなった?」
 食いついてきたのはきり丸である。
「ええ。臨時で雇われた女中は皆突然解雇になってしまったの。それで、私は兄が帰ってくる前に急いで家に戻らないと、って思って…」
「突然解雇って…ちゃんとお給料出たんですか?」
「え? ええ、一応…」
 変わったことを聞くのね、と思いながら椿は頷く。
「椿さん、もしかして…雇われてたのはドクタケ城では?」
「あら、知ってるの?」
「ええー! ドクタケ城で働いてたのかよ?! やめなよあんなとこ」
「きりちゃん、もうやめてるってば」
「あ、そうか」

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