第1章 思い出したくないこと *秀吉視点*
そんな空気を破ったのは三成だった。
「ようやく、読み終えました…あれ?光秀様?」
きょとんと三成は目を丸くしながら光秀を見る。
空気が読めているのかいないのか…
光秀はいつものことだが、付き合いが長い三成もたまにわからない時がある。
「ふっ丁度いいころ合いだったみたいだな。」
「三成、俺が直々に効率よく食べられる昼餉を用意してやったぞ。―――――天下飯だ。」
光秀は手に持っている怪しげな『天下飯』を三成に渡す。
「わざわざ、ありがとうございますっ!」
「早速いただきますね!」
俺が不安になっていることなど微塵も知らない三成は子どもの様に目をキラキラと輝かせ、満面の笑みでそれを受け取った。
「まあ…味の保証はしないがな…」
光秀が何かぼそっと呟いたようだが、俺と三成の耳には届かなかった。
この時のつぶやきが聞こえていたら…と後に後悔することになるとは夢にも思わなかった。
「…ああ、気にするな。せっかく、秀吉もいるんだ。2人で分けて食べてくれ。…俺は信長様に呼ばれているからこのへんで失礼する」
そう言って部屋を出ていく光秀の後姿を見送った。
にやりと笑ったことに気付かずに…