第1章 思い出したくないこと *秀吉視点*
仕方ない、いつものやつをやるか。
俺は三成の横に座り、慣れた手つきで一口サイズにした昼餉のおかずを三成の口に持って行った。
三成は書物に夢中になりつつも、器用に口をもぐもぐさせながら食べる。
飲みこんだことを横目で確認し、新たにおかずを三成の口に持っていく。
こんなやり取りを数回繰り返していると
何やら前から嫌な視線を感じる…
俺はゆっくりと視線が感じる方を向いた
するとそこには襖にもたれながらいつものように腹立たしくにやにや笑っている男
――――――光秀だ。
俺は眉間に深い皺を寄せた…
すると光秀は笑いながら口を開く
「…おい、秀吉…そこは口ではなく頬だと思うが?」
なんだ?
俺は光秀の視線の先に目を向けると
おかずを挟んだお箸が三成の口にはいかず、頬に刺さっていた。
…それでも相変わらず三成は気付かずに本に夢中である。
こんな時にも気づかない三成の感覚はどうかと思うが…
「…悪い三成。」
俺は持っていた手ぬぐいで頬をぬぐった。
そんな様子をクスクス笑いながら俺たちをみる光秀。
まったく、嫌な男だ。
わずかに怒りの色を含ませた目で光秀を見据える
「…で、お前は何でここにいるんだ?」
「ああ、女中が三成が昼餉を食べなくて困ると噂していたのでな。」
「そんな三成のために俺が直々に作った『天下飯』を食わせてやろうと思ってここに来たんだが、先客がいたとはな」
その瞬間、光秀が不敵な笑みを浮かべた。
嫌な予感がする…。
「お前が作った…だと?」
俺は眉間に深い皺を寄せた。
不穏な空気が流れる――――