第2章 眩しすぎるもの
杏の笑顔を見れていない
この真実が俺の胸をざわつかせる。
この気持ちは一体何なんだ?
答えがでないものを考える
今までこんなことはなかったのだが…
知りたい
だが知ってはいけない…
これらが葛藤する。
まあ、俺は分析は得意な方だ。
もちろんこの場合…
後者の答えが正しいだろう。
…少なくとも、俺にとってはだが。
俺はそんなことを考えながら、縁側へ出た。
するとそこに
朝餉の片づけを済ませたのであろう杏が縁側に腰かけ、足を出した状態で、ごろんっと背中を倒していた。
俺は杏の様子を遠くから窺う。
(…暑さにやられている…といった様子だな。だがしかし、無防備にもほどがあるだろう)
感情の赴くまま、ありのままの姿をさらけだしている杏。
杏のその無防備さが俺の意地悪心に火をつける。
またその一方で
なぜか甘く温かかい気持ちにもなる。
杏の温かさはとても心地いい。
心地いいが…
俺には眩しすぎる――――
眩しいものには手が伸ばせないものだ。
ああ、わかっている。
わかってはいるのだが、
どうやら俺の心は甘くて温かい褒美のようなものを求めてやまないらしい。
俺はいつの間にか口元を緩ませながら杏の元へと歩んでいた。