第5章 M×A for MJbirthday
A side
「先生、ごめんね…。
先生の誕生日なのに、俺ばっかりが…。」
ぽろっとこぼれた本音。
何でって先生は聞くけど、そりゃだって…。
先生の誕生日なのに、先生がご飯を作ってくれて、一緒に住もうって…。
また、涙がぽろりと溢れてくる。
「あー…。また泣く…。
俺に悪いと思うなら、せめて飛びっきりの笑顔をちょうだい。」
何で泣いてるかは理由がつく。でも気にしなくていいからって。
「笑うだけじゃ、足りないでしょ?」
「バカだな。雅紀の笑顔が一番嬉しいよ。」
どこまでも優しくて。暖かくて。愛おしくて。
こういうのを、きっと愛されてるっていうんだろうな。
「ほら。ごめんじゃなくて…。」
「先生、ありがとう。」
心の底からの感謝の言葉を贈ることが出来た。
うまく笑えてたかは分からない。だって、涙が止まらないんだもん。
そんな俺に、
「やっぱり雅紀には、笑顔が似合う。」
そう言って、優しく頬にキスをくれた。
体は自分の意志に反して、びくっと大きく跳ねる。
そんな俺を見て、先生は少し悲しい顔をした。
ああ…。またやっちゃったな…。
せっかくの先生の誕生日なのに、俺は先生に何も出来ない。
それどころか、そんな顔をさせてるんだ。
「先生、あのね…。」
声が震える。
小さく震える手で、自分の着ていた服を一枚ずつ脱ごうとする。
そんな俺を、呆気に取られてみてる先生。
上半身を脱ぎ終えたところで、
「あの…、好きにして、いいから…。」
先生の方へと手を伸ばした。
大丈夫。大丈夫。
何度も心で唱えて、震える息を整えようとする。
「雅紀…。」
先生がゆっくり近付いてくる。
ドクンと心臓が跳ねる。
「あ…。」
「無理すんな。」
ふわりとその場にあったブランケットを掛けてくれた。
「無理なんかしてなー…」
「してるだろ。
…体が震えてる。」
お前はすぐに無理するからな…って、また先生は笑う。
「待つから。ちゃんとお前が大人になるまで。
心がちゃんと大人になるまで、支えるから。」