第5章 M×A for MJbirthday
「それから、家も解約してきたから。」
いろいろ驚いて、声が出てない。
「だから、雅紀の荷物、ほとんどこっちに持ってきといた。
ごめん、勝手に部屋入って。」
一気に言うと、
すごい戸惑った顔。
「…それって、どういう」
「俺と一緒に住んで。」
「…へ?」
鳩豆的な顔してる雅紀がちょっと面白くてクスッと笑うと。
「ちょっ、笑わないでよ!」
「ごめんごめん。」
「でも、バイト代無いと、」
「生活費は俺が出すから。」
「え…」
「ごめん。俺さ、心配でたまんないの。
お前がこのまままた、あの生活続けて。
あの料理屋でこき使われ続けて、また体壊すの…
怖いんだよ。
お前が、こっから居なくなるんじゃ無いかって。
自分の貯金、お前一人養うくらいはあるし。
学費はばぁちゃんに払ってもらってんだろ?
だから、…お願い。
俺と一緒に、居てください。」
「せんせっ…」
敬語はなくなっても、先生呼びは無くならないこいつとの、
また新たな、記念日になった。
「バイト先、知ってたの?先生。」
ひとしきり泣いて、落ち着いた後。雅紀がふとたずねてきた。
「あー、一回行ったからね。
高校の時の友達と、あ、その中に俳優やってる奴が居て。」
「あーだからあんな高いところ…」
「確かに高いし、料理も美味しいのかもしれないけど、
あんなんじゃダメだよね…」
「…どこ、見たんですか」
「終業式の後。俺から呼び出し受けて、間に合わなくって、怒られてたところ。
用事あるなら言えよ?早く解放してやったのに。」
ま、でもそういうところが生真面目でいいんだろうけど、言うと。
ちょっと照れくさそうに笑った。
窓の外は夕焼けが広がっている。
明日は晴れんのかな…。
「先生、ごめんね…」
「え?」