第6章 ふたりの記念日 A×N
「ねぇ、かず。」
「ん」
「こっち向いて?」
路肩に車を停めた相葉さんが、
「やだ」
何か企んでる。
「なんでよ」
「やなもんはやなの」
「じゃあ、」
と言って、俺の左手を引っ付かんだ。
「ほれ」
左手薬指の、冷たい感触。
「え…?」
銀色に鈍く光る、
シルバーリング。
これは予想外だった。
「なんで…?」
「だって…ずっーと一緒にいたいじゃん?」
相葉さんも同じ気持ちだった。
「ふふ。」
「ありがとう…相葉さん…」
「今日は、記念日だしね?」
何年も前に、俺と相葉さんが出逢った、
11月15日。
「覚えてくれてたの…。」
「忘れないよ。忘れられないよ。」
「相葉さん…」
一緒にいようね?
なんて言わない。
永遠なんて本当はないんだ。
でも、
俺たちは永遠で居たい。
「雅紀。」
「うん?」
「愛してる。」
「俺の方が愛してるから。」
違うね。
俺の方が愛してるね。
ー完ー