第5章 M×A for MJbirthday
M side
今日の教材を持って、理科実習室に教室後方の扉から入る
…と、電気が点いていない。
窓から差し込む朝の光だけが、教室を照らしていた。
「あい…ば…?」
前から二列目の席に座っている。
否、正確には机に突っ伏して寝ていた。
なんだか電気は点けてはいけないような気がして、
とりあえず前の教卓に教材を置く。
…えーと、どうしよう。
昨日あの店で働いていたのが本当に相葉なら、
帰ってから、学校に来るまで…
6時間もない。
あの店の閉店は深夜だし、シフト制で早く帰れているとも思わない。
課題をこなすとか、そういうことじゃない。
寝らんないのか…コイツ。
だから、普段の授業のレポートも…
やる時間なんて、何処にも無かったんだろうな…
ちゃんと話、聞いてやれば良かった。
はぁっとひとつ溜め息をついて、
ちょっと相葉に近づいてみる。
…起きない。
てかコイツ、綺麗な顔してんなぁ。
サラサラの前髪。いい感じの眉毛。
目尻の笑いジワと、スッと通った鼻筋。
そして、ちょっと乾燥した薄い唇。
じっと観察していたら少しだけ開いていた窓から、夏の朝の爽やかな風が吹いてきた。
『それを恋って言うんだよ?』
ちょっと真面目な顔をした、二宮を思い出す。
相葉の顔のすぐ横に顔をよせて、呟いてみる。
「そっかぁ…恋か、コレは。」
と、そのとき近くの教室でガラスが割れる音がした。
「わあっ!!えっ…先生っ…」
ガラス割れるタイミングが、ミラクルすぎた。