第4章 ピックアップ御礼!
困惑してる翔を、とりあえず空いてた斜め前の楽屋に押し込んだ。
後ろ手で鍵を掛けて、部屋の真ん中の方でキョトンとしてる翔を見る。
やっぱり…。
またそんな瞳で俺を見る。
ずっと見ている。
だけどさっきよりも、何かへの期待を込めた瞳。
「ねぇ、どうしたの?智。」
「なぁ、翔。
何でそんな目してんの?」
「へ…?」
「物欲しそうな目。」
そう口にした途端、翔の顔がぼっと赤くなった。
…図星か。
「足りなかった?昨日の。
でも昨日からじゃないよ。ずっとそんな目してる。」
「いや、えっと、その…。」
「俺じゃ…ダメ?足りない?」
ちょっとずるいけど、しょんぼりしたフリをする。
下を向いて、小さな声にする。
すると、決まって翔は慌てだして
「あ、違うから!違う!ホントに違う!ただ…。」
「ただ?」
「引かない?」
「引くわけない。」
「…刺激が足りない。
満足してないとかじゃなくて、この前の…夜が凄かったから…。」
思い出したのか、耳まで赤くしていく翔。
…何なんだよ、可愛いじゃねーか。
そんなのを聞いたら堪らない。そんな瞳をして、しかもここは空き部屋。他に誰もいない。
迷うことなく、俺は翔を押し倒した。
「え、ええ!
ちょ、智、待って!」
「無理…。」
「わ、んんっ。」
空き部屋とはいえ、ここは楽屋。ドア1枚を挟んだ廊下では、絶えず人が行き来する。
そんな状況に興奮してるのは、俺以上に翔。
中はいつもよりギュンギュンに締め付けてて、いつもより可愛い声をたくさん漏らす。
時間ぎりぎりまで抱き合った。
アブノーマルに引き込まれたのは俺じゃない。
奥さんのほうだ。
「また…シテね?」
-end-