第3章 M×O featuring 『君への想い』
M side
コツコツ
部屋の前の廊下は、よく響く。
…智、だよな。
小さめの歩幅のせいか、間隔の狭い足音。
控えめな、小さな音。
間違えるはずがない。
急いでドアが開く前に、玄関に急ぐ。
鍵は開けてた。
絶対に帰ってくる、って。
ここに戻ってきてくれる、って。
「ただいま」
「さとしっ…」
懐かしい匂い。
懐かしい温度。
さっきまで無くしてたもの
全部がここにある。
抱きしめれば、俺を見つめる上目遣い。
寒さで鼻と頬を少し赤くさせて、
俺を見てる。
堪らなくなって、キスをすれば、
「んっ…」
漏れる吐息は、色っぽくて。
唇を離せば、
とろんとした瞳。
「さとしっ…その顔、反則…」
「へ…?
あ、ちょ…んんっ。」
我を忘れて、智を味わう。
甘くて、もっと欲しくなる。
ずいぶん長い間、そうしていたみたいで
「も、苦し…、ふっ。」
とん、っと胸を押してくる。
「あ、ごめん。つい…。」
「ついって…。」
バカだなぁ、潤は。
そう言って、俺の頬をぺちっと叩いた。
その仕草が、愛おしくて。
その少しの傷みが、愛おしくて。
「…ごめん。」
「え?潤!?」
強く抱きしめ直すと、
さっきよりもずっと深く唇を重ねた。
セーターの端から、
するっと手を滑り込ませると
「ぁ…っ。」
小さく声を上げて、震える体。
…もう止まれない。