【R18 ハイキュー!!】幼なじみ 木兎光太郎との場合
第3章 この世から木兎がいなくなったとしたら……
小学2年の時、国会議事堂に社会科見学に行った.
はぐれてはいけないとさんざん言われていたのに、人よりテンポが遅い私は案の定はぐれてしまった。
長い廊下。薄暗い照明。
怖かった。
廊下をどっちに進めばいいのかわからず、途方に暮れていた。
「何やってんだよ」
いきなりの声に振り返ると、同じクラスの子が仁王立ちしていた。
2年生になってから一緒のクラスになった子だった。
苗字が難しい読み方でわからない子。
「……みんなと、はぐれちゃって……」
「ずっと一緒に見学してて、どうやったらはぐれられるんだよ」
自分だってはぐれてるんじゃ……
どう見ても一人だけど。
「トイレ行って出てきたら、もう誰もいなくて……」
「どんだけしょんべん長いんだよ」
なんか、あけすけな子だ。
「あの……」
名前、なんて読むんだっけ……
「ほら、行くぞ」
スタスタ廊下を歩きだす後ろ姿をぼっと眺めていると、
「何やってんだよ、早く来いって」
自信満々に歩いてるけど……
「出口、わかるの? ……えっと……」
「ぼくと」
「……?」
「木兎光太郎、オレ」
「あ、うん……木兎、くん……」
ヘンな苗字。
「今おまえ、ヘンな苗字って思っただろ」
なんでわかるの?
「今なんでわかるんだって思っただろ」
「……」
シンとした絨毯の廊下をただ黙ってついて歩いていると、
「おい」
すっと前から手が差し出される。
「手。またはぐれたら困るだろ。おまえ静かだから、ちゃんと後ろからついてきてるかわかんねぇし」
恥ずかしい。
でも、なんか拒めなかった。
手を出すと、ぎゅっと大きな手から体温が伝わってきた。
「ちっせぇ手」
ずんずん大股で歩く背中を追いかけるように、半分引きずられるようについていく。
「あの……ありがとう、ぼ、木兎くん」
「こーたろーでいい」
「え……」
「苗字呼びずらいだろ。ヘンだし」
「ヘンじゃないよっ……珍しいかも、だけど」
「どっちにしろ呼びずらいからこーたろーな」
「……わかった」
その後、出口で探してた先生たちに合流した私たちはすごく怒られた。
でも光太郎は「自分が私を付き合わせた」とかばってくれた。
この社会科見学は、私にとっていい思い出になった。
そして、あの時以来、私は光太郎に恋している。