第8章 クリスマス企画
『私の幼少の頃の記憶消してない?』
その一言を発してから、浦原は黙り込んでしまった。
「…いつから、気が付いていたんスか?」
何処か怯えたような声で、彼女に問いた。浦原は、この話しをいつされるのかと、前々から怯えていたのかもしれない。
「いつからかな…多分…初めから。なにか、大切なものが消えていく感覚があった。」
「そんな前から…」
「でも、分からない…なんで、私の過去の記憶を消すの?」
「そ、それは…」
つられは、浦原の顔をコチラに向ける。
「答えてよ、喜助!!!私…このまま、忘れたくない…なんで、私の記憶を奪うの?!」
「それは…」
目を閉じると、浦原は思い出す。心から愛おしいと思った人。目の前で、涙を零すつられとその人が重なる。
『喜助さま…お願いします。あの子を、、、どうか…普通の子にしてやっておくんなし…忌まわしい、わっちの記憶とここに居た記憶を消してください。あの子をココから…この檻から出してあげて…』
涙を流して頼み込む愛おしい『魅華』。愛おしい人の願いなら、聞き遂げたい。
「喜助ッ!!」
「つられ!!」
急に名前を呼ばれて、ビクッとするつられ。喜助は、ポケットから、クラッカーを鳴らした。
「メリークリスマス!」
「なっ…喜助!私、真面目にきい……」
そのまま、つられは気を失った。浦原は、倒れる彼女の体をそっと抱きしめた。
先程、鳴らしたのは記憶を一部部分を消すクラッカーだ。
「ごめんなさい…魅華サン。僕は、、、貴女より、つられが好きだ…愛してる。だから、知られたくない…きっと…全部話したら、彼女は、もう戻ってこない…そんな気がする…絶対離したくない…傍に居させてほしいンス」
彼女の寝顔を見つめる。ぽたぽたと、涙が流れた。
『歪んでいると、言われても構わない…僕は、つられを愛してる。』
観覧車の頂点に、到達した。浦原は、眠っている彼女の唇を奪う。その時に、浦原の涙が頬を流れる。
「とんだ、悲しいクリスマスッスね」
『貴女は、あと少しで目を覚ます。その時、前に話していた記憶は、なくなります…。いつもの、日常…いつものつられの笑顔が…戻ってくる』
愛してます、、、心から。