第6章 神様なんか、いない
「...俺...言うよ...警察に話す...」
「翔...よく決心したな...
今から、警察を呼ぶけど...大丈夫か?」
...俺は、唇を噛みしめて頷いた。
それから間もなく、刑事が3人で病室に来て、
俺は事件のことを話した。
思い出すだけでも、吐き気がする...
でも、俺は覚えていることを、
出来るだけ伝えようとした。
感情に蓋をして、
あたかも、人のことを話すような気持ちで、その時あったこと、されたこと...
正確に伝えようとした。
話終わり、刑事のひとりが俺にハンカチを差し出したことで、自分が涙を溢していたことを知った。
「頑張って話してくれてありがとう..
君の悔しい気持ちは、必ずおじさんが、晴らしてやるから!....約束するよ!」
その時、初めて刑事さんの顔を見たら、
刑事さんも泣いてくれていた。
....俺のために...
その涙を見て初めて
俺は膝の上で握った拳を震わせて、嗚咽した。
そいつらが、名前で呼びあっていたのを、俺が覚えていたから、3人は直ぐに捕まって補導された。
でも俺は、
学校に行くことが、
出来なくなった。
病院は直ぐに退院して、
顔の痣が消えても、
俺は、外に出ることが、
出来なくなった。
行かなきゃいけないことは、分かってる。
このまま、家の中だけにいるなんて、
そんなこと出来ないことも。
でも....
だけど.......
母さんも、学校へ行けとは、
言わなかった。
行って欲しい気持ちはあっても、
外に出て、好奇の目に晒されるのが、
僕と同じで、
怖かったんだと思う。
......あの事件以来、
家の中に、闇が広がったままだった。