第6章 神様なんか、いない
「父さんは、仕事柄、今回の翔のような人を何人も診てきた。翔よりもっと、大怪我をさせれらていたり、妊娠してしまった子もいた..」
「.....」
「その被害者の殆どが、泣き寝入りする...これ以上、傷つきたくない、思い出したくない...そう言って、両親も俺に泣きつくんだ...」
...父さんの声は、震えている...
「..許しちゃいけないんだ...こんな卑劣な犯人は、罰せられなければならない..同じような被害者を、また出さないためにも...
翔...話せるな..?」
「...辛いけど、裁判で、証言して..」
「裁判??」
俺は、起き上がって父さんの顔を見た。
「...刑事裁判になる..」
「...そこで...話すの?やられたことを!?」
.....そんなの..やだ..人に話すなんて、
俺だってイヤだ///
「翔!!父さんもずっとお前といるから!一緒に戦おう..犯人に、悪いことをしたんだと...2度と同じ事を繰り返さないように...泣き寝入りしちゃ、ダメなんだよ!」
「...俺だって...忘れたい...」
ぼそっと、小さく言った俺を、父さんはぎゅっと、強く抱き締めた。
「翔...父さんだって...できれば、お前をそんな場に立たせたくない...だけど...それ以上に、犯人を許せない///人前に立たせ、どんなことをしたのか...社会的に制裁を与えられなければ...普通の顔して、生活していくなんて///そんなの、許さない!!」
「父さん.....」
...物心ついて、父さんに抱かれた記憶なんかない...
いつも忙しくて、いつもいなくて...
甘えたこともなくて...
その父が...俺を抱き締めて、泣いていた...
全身を、怒りに振るわせていた...