第5章 大人になるということ
『大人になったら...』
俺たちは、いつ大人になるんだろう...
年齢なの?
それとも、大人になる、何か特別の儀式とか、
越えなきゃならない経験があるんだろうか?
「カズくん...俺たちって、まだ子どもなの?」
「そうだな~...子どもなんだろうな~...
成人になったって、子どもの人は子どもだろうし、俺たちと変わらなくたって、大人な人はいると思うし...」
考えながら、カズくんは言った。
「大人になるって、難しいね...」
そう言う俺に、カズくんは笑って、
「きっとさ、気が付いたら大人になってるんだよ...
いろんな思いをいっぱいして...
悲しいことや、悔しいことも...嬉しいことも楽しいことも...
ゆっくり大人になれば、それでいいよね...」
「急ぐこと、ないよね...」
同じような学生で賑わうマックの片隅...
俺はカズくんと、なんかすごく深い話をした気がした。
俺たちは、確実に大人になる。
その時がいつなのかは分かんないけど、
胸を張って、しっかりと自分の脚で立って、
自分の信じる道を歩いている...
そんな大人になっていたい。
誰かに、よくできたね、って、褒めてもらうんじゃなくて、自分自身が、それでいい!って、そう自信を持って言える、そんな大人になっていたい...
「翔くん、帰ろうか...」
「...うん」
曲がり角で、カズくんは右手を出した。
驚く俺に、
「頑張ろうな!カッコいい大人になろうぜ///」
笑って手を握った。
ぎゅっと握るカズくんの手は、
俺より小さいけど、何だか頼もしかった。