第5章 大人になるということ
「しょーくん/////」
赤くなって俯いた俺のこと、
智くんはぎゅーっと、強く抱き締めた。
さっきの10倍の強さで....
「智くん...痛いよ~///」
俺の訴えで、慌てて離した智くんは、
「ごめん//ごめんね~...うれしくって、
つい...これじゃ、相談に乗ってることには、ならないよね...」
頭を掻く智くんが、
何だかすごく可愛くて...
俺は思わず、笑ってしまった。
声を出して笑った俺を見て、
智くんも一緒に笑った。
夕焼けが、そんな俺たちを、
オレンジ色に染めていた。
何だか穏やかで、
優しい気持ちになれた。
「...智くん、今日、ありがとね..」
素直に感謝の気持ちを伝えると、
「ありがとうって、俺、翔くんのこと、
襲っただけだし...何もしてないよ..」
智くんは、そう言って、また頭を掻いた。
.............
その後も、気まずくなることなく、
お互いのことを話して、時間は過ぎていった。
「そろそろ、帰ろっか...」
「あっ、そうだね...」
気がつけば、野球の小学生も、
片付け終わって帰り始めていた。
俺と智くんも、ふたりで立って、
ズボンのホコリを叩いて落とした。
「また、会おうね...」
智くんが、そう言ってにっこりするから、
俺も笑って、
「うん..そうだね..また...」
と言った。
松岡先輩には、きちんと断ろう。
好きでもないのに、付き合うなんて、
考えられないし...
でも、男と男でも、そういう関係が、
あるんだって、
そんなこと、思いもしなかったから、
何だか、不思議な気がした。