第5章 大人になるということ
「悩んでるなら、僕が聞いてあげるよ~
河原、行こう...」
「うん...」
俺は智くんと肩を並べて歩いた。
自転車を押して歩く智くんと、
学校のこととか、弟のことなんかも話したりして、
前から思っていたけど、
智くんだけが持ってる、
独特の空気感というか、纏っている雰囲気のせいなのか、彼の隣にいると、何だかすごく安心する。
....優しい気持ちになれる。
智くんって、ホントに不思議な人だ。
肩を並べてふたりで歩いた。
それだけのことで、
ざわざわしてた気持ちが、
何だか穏やかになっていくのが分かった。
「あっ、野球やってる..」
そう言いながら智くんは
河原の土手に腰を下ろした。
俺もそのとなりに並んで座った。
川面を渡ってきた風が、
俺と智くんの髪を揺らしていく。
「.......」
「...........」
智くんは、俺が話し出すのを、
何も聞かずに、黙って待っている。
野球をしている子どもたちを、
少し微笑みながら、楽しそうに見ている。
「......智くん...」
「...ん?」
「.....俺ね..今日ね...」
「...ん...」
「...先輩に、キス...されて..
付き合ってって..そう言われたんだ...」
智くんは、黙って俺の話を聞いている。
「...そんなことさ...俺、思ってもなくて...好きでもない人と...急に、されて..俺..」
言ってる内に、思い出して、
悔しそうに俯く俺に、智くんが、
「翔くん、俺のことは、好き?」
「.....えっ?...」
「好きか、嫌いかでいったら、どっち?」
「.....すき...かな...?」