第5章 大人になるということ
弟は『修』と名付けられた。
弟が家に退院してきてからは、
なんだか急に家の中が賑やかに、明るくなった、
そんな感じがした。
俺も、学校から帰ると、
真っ先に修の顔を見に行くし、
最初は怖くて出来なかった抱っこも、
上手になった。
母さんは、小さいパパだ、って言っていた。
修は日に日に成長していく気がして、
見ていても楽しかった。
冬になって、来年の文化祭のための、
映画の話になっていた。
今年は部長の方針で、恋愛学園ものにするらしい。
今日はその打ち合わせがあり、
俺も、斗真と参加していた。
俺は、ぼんやりと窓の外を見ていた。
「...どう?櫻井??」
「......」
「翔!先輩が、主役を翔に、だって!」
「えっ??」
俺が慌てて立ち上がったから、
その反動で椅子が後ろに大きな音を立てて倒れた。
「だからさ、櫻井に主役をやって欲しいんだよね、
どうかな~?」
「無理です!そんな、主役なんて///
斗真がいいと思います!!」
俺がどうしてもやりたくないと言ったお陰で、
斗真が主役になった。
まあ、元々映画やりたいって言ってたのは、
斗真なんだし、俺は、成り行きで入ったようなものだし...恋愛物なんて、とんでもないよ!!
という訳で、俺は斗真の友人の役で、
出演することになった。
...まあ、それくらいなら...
そう思って引き受けたのが間違いだった。
台本を渡されてびっくり!
まさか、あんなシーンがあるなんて!!
...俺は今更できないとも言えないし、
困り果てていた。
その問題のシーンと言うのが...