第27章 君が描いた未来
俺は黙って潤の身体を引き寄せた。
「...翔...」
すぐ側に、潤の端正な顔がある。
こんな距離感は新鮮で、何だかドキドキする。
2年以上一緒に暮らしていても、こんな風に潤に触れるのも初めてだった。
潤の気持ちは分かってた。
俺のことを思って、俺のことを一番に考えて、寄り添ってくれていた潤...
でも、それ以上を匂わす様なことはなかった。
ただ一度だけ...
酔ってソファで寝ていた潤にベッドに行くように言おうとすると、寝言で俺の名を呼んだことがあった。
「翔...好きだよ...」
って...
俺は、気付かない振りをした。
俺はズルい...
潤の気持ちも、潤の愛情にも、
ちゃんと気付いていたのに、目を反らせていた。
......潤のことは嫌いじゃない...
いや寧ろ、その逆だから、
それを認めてしまうのが怖かったんだ。
雅紀がいないから潤...って、そういうのが嫌だった。
だけど...
『俺が潤と幸せになることを、雅紀は願ってる』
カズにそう言われた。
もう、雅紀が...なんて言い訳してる自分は終わりにしよう。
雅紀を理由にして、潤と向き合わないのは、雅紀にも潤にも、誠実じゃない...
何より、もう自分に嘘をついたままじゃいられない。
「...月が、綺麗だね...」
潤がそう言った。
「潤...今まで、いろいろ、ありがとうね」
「なんだよ...何か、別れの挨拶みたいじゃん」
潤は笑っている...
そうじゃないって、分かっているからでしょ?
「まあ、ある意味、別れの挨拶って言えば、そうかな~?」
「えっ??そうなの!?」
...焦った?...可愛いな...
「別れだよ...今までの俺たちにはね...」
「....」
潤は、黙って俺の言葉を待っている。