第27章 君が描いた未来
『 翔 へ 』
この手紙を翔が読んでいるってことは、
俺はもうこの世にいないんだね
大丈夫だったかな?
俺は最期、潔く、ちゃんと旅立てたかな?
無駄な命乞いして、
悪足掻きしなかった?
自分が末期癌だと知ったときは、
正直、何で俺なんだよ?って思った
残された時間が僅かだって知って、
綺麗ごとじゃなく運命を恨んだ
だけど、嘆いていても何も変わらないんなら
残された時間を、どう生きるかって
そういう事なんだって
やっとそう思うことができた
それまでには
何度も泣いたけどね
翔
今までありがとう
俺のこと、愛してくれて、側に居させてくれて
幸せだったよ
翔の隣で見た景色は
どんなときも、キラキラ輝いていたよ
俺の人生
翔と生きて来れたことが
まさに奇跡だよ
だから、人よりも少し短いけど
後悔してないよ
君といた季節は、俺の宝物です
でも
ひとつだけ心配なのは
翔の事です
しっかりしてるように見えて
ホントは淋しがり屋で甘えん坊で
ひとりでいるのが嫌いで
なのに律儀に俺のこと
ずっと思ってくれてるんじゃないかって
一人で泣いてるんじゃないかって
そう思ったら、
心配でゆっくりあの世にもいられないよ
だから
後のことは潤に任せました
翔、どうか怒らないでね
潤を俺の代わりに、ってそう言ってる訳じゃない
ただ、側にいて、翔を支えてくれる人が
翔の一番の理解者になってくれる人が
絶対必要なんだ
潤になら
潤ならそれができるって思ってる
潤はね
翔のことがことずっと好きだったんだよ
そんなら尚更
側にいて貰う訳にはいかないって
そう思うかもしれないけど
潤は全部分かってるから
翔が一生、自分のことを受け入れてくれなくても
それでもいいって
翔の事、側で支えるから
って、そう言ってくれたんだよ
だから俺は、安心して旅立てます
君のことがすきだから
翔、どうかこの先の人生も
幸せであって欲しい
俺のことを忘れて
って言いたいところだけど
ほんの少しは覚えていてね
ずっとずっと
君の幸せだけを祈っています
翔、愛してるよ
ありがとう
さようなら
雅紀