第27章 君が描いた未来
寺院に着き、住職に雅紀の納骨堂を開けて貰った。
今年は三回忌ということで、簡単に略式での法要のための、読経をお願いしてあった。
「今日はいい日ですね...では、始めますね..」
広い本堂の中に、低い読経の声が響く...
凛とした空気の中、俺は静かに目を閉じた。
......雅紀...
今年もこの日が来たね...
雅紀...
今、ここにいるの?
俺を...俺達のことを見ている?
お前が逝ってしまって、
俺は、
覚悟していたはずなのにさ、
予想以上に、抜け殻だったよ。
次の日から、どうやって生きていけばいいのか...
息の仕方さえ、忘れてしまったみたいだった。
苦しくてさ...
何をしていても、雅紀...
お前の笑顔が、胸の中で広がって...
部屋の中はもちろん、病院の中にさえ、
雅紀の面影と思い出だらけで...
愛する人を失うって、
こういう事なんだって...
初めて知った。
出口のない、真っ暗な迷路を彷徨っているその時、
潤が来た。
「翔、久しぶり...」
って、当たり前の顔して...
大きなカバンを持って。
『今日からよろしく』って...
雅紀......
お前がまさか、そんな手回し、してたなんてね。
雅紀が逝ってしまったあの日、病院で、
ドクターから手渡された手紙...
やっと開ける気になった時は、
東京に帰って来て、三日経っていた。
いつもの雅紀の文字よりも、弱々しくて、
力がないその文字に...
胸が押し潰されそうだった。
死期を悟ったお前が、
俺にあてた手紙...
そこに書いてあった、
驚くべきその内容に、しばらく茫然としたのを、今でもはっきり覚えているよ。