第27章 君が描いた未来
雅紀の遺志に従って、
彼の亡骸は、この地で荼毘に付し、病院の近くにある寺院に納骨することになった。
東京から、俺と雅紀の両親が駆けつけてくれた。
これも雅紀の遺志だった。
ほんの近しい者たちだけで...
雅紀のお袋さんは、雅紀の棺に縋って、人目も憚らずに泣き崩れた。
雅紀の親父さんや、俺の親も、何度も涙を拭っている。
最愛の家族を失った者たち...
大切な息子に先立たれた悲しみに、立っているのもやっとな雅紀のお袋さんは、俺の母親に抱えられて俺の側まで来た。
「翔くん...今まで...ありがとうね...」
「...おばさん...」
俺はその小さな背中を抱き締めた。
「雅紀はね...ずっとあなたが好きだったの...子どもの、頃から...ずっと..」
「......」
「...だからきっと...きっと幸せだったと思う...翔くんと、一緒に...生きられて...」
「......お義母..さん...」
もう...
泣かないって決めたのに...
きっと雅紀は笑ってる...
『翔は、泣き虫だな~』って...
そう言って、笑って見てるはずだ。
......雅紀、今だけだから...
泣き虫な俺を、
見ない振りしてて。
雅紀...お願いだから...
小さな箱に入ってしまった雅紀を、
彼の希望通りに、田園の中の小さな寺院に納骨して、
俺達は、この地を後にする。
雅紀が、最期をひとりで過ごすと決めたこの土地に...
俺達は別れを告げる。
『また来るよ...雅紀...』
それぞれが、心でそう誓った。
真冬にしては温か過ぎるくらいの温かい日だった。
ふと空を見上げると、
小さな白い雲が二つ、青空に浮かんでいた。
...雅紀と俺みたいだな...
そう思って見ていると、二つの雲は、風に流され、
形を変え、
やがてひとつになった。