第27章 君が描いた未来
その晩は、雅紀の隣で添い寝した。
どんどん冷たくなっていくその身体を抱き締めて...
医者として、何人もの患者の死と向き合って来た。
決して慣れることはないけれど、
悲しみを内に秘め、医者として、悲しむ家族たちに寄り添えるようにもなってきた。
それでも、どうしても悲しみに負けてしまった時、自分の無力さに憤った時、雅紀が俺を受け止めてくれた。
黙って胸で泣かせてくれた。
雅紀が...
いつも彼の存在が、俺の癒しで、救いだった...
なのに...
雅紀...
ひとりで...たった一人で逝く瞬間は、
何を思ってたの??
俺のことを、
思い出してくれた?
雅紀......
...一人で旅立たせてしまって、ごめんね...
俺は、答えない雅紀に、胸の中で語り掛けた。
どんどん冷たくなっていくその身体を抱いて...
俺は、まんじりともしないで朝を迎えた。
どんなに悲しくても...
朝は訪れる。
誰の元にも、
平等に...
カーテンの隙間から、眠ったままの雅紀の頬にも、柔らかい日差しが届いた。
雅紀の担当のドクターが、朝一番に顔を出してくれた。
「いろいろと、ありがとうございました..」
「力、及びませんで...」
彼は、雅紀の最後の様子を話してくれた。
俺が同業だと知っているから、一部事務的に、専門的に...
でもそれが俺には有り難かった。
「で...これを預かっていました...」
ドクターが俺に差し出したのは、一通の封筒。
表には、
『翔へ』と書いてあった。
手を出せずにいる俺に、
「相葉さんが、自分が死んだら渡してくれと...預かったのは一週間ほど前でした..」
一週間...
俺が雅紀から離れてすぐなのか...
俺は、黙ってその封筒を見つめた。