第27章 君が描いた未来
安曇野に着いたときは、深夜の2時を回っていた。
玄関前に車を停め、
ふと空を見上げると、大きな満月が輝いていた。
まるで、俺が道に迷わないようにと、
雅紀が照らしてくれているようだと思った。
通用門のチャイムを押すと、直ぐに当直の看護師が迎えに出てくれた。
奇しくも彼は、雅紀の担当をしてくれていた有岡くんだった。
「こんな遅くに、ごめんね...」
「いえ、お待ちしてました...どうぞ」
雅紀はまだ、あの病室にいた。
ゆっくりとベッドに近付く。
有岡くんが、白布を取ってくれた。
......
...まさき...
白い顔...
でもその口元は、ほんの少し笑っているようにも見えて...
そっと頬に触れると、もう冷たくて...
「雅紀...」
「相葉さん...最後は、俺のことも、翔...って...誰を見ても、翔、って...」
「....そうなんだ..」
「相葉さん、翔さんの事を分からなくなってしまうのが怖いって...翔さんを見ても、分からなかったらどうしよう...
そう心配してたのに...分かないどころか、周りの人、みんなが翔さんでしたよ...
相葉さんは...最期は、翔さんしか...必要じゃなかったんですね...きっと...」
有岡くんが泣いている...
雅紀のために...
何度も、何人も送ってきたであろう彼が...
雅紀のために泣いてくれている...
雅紀...
君はいつも周りの人に愛されていたね...
太陽みたいな雅紀は、
そこにいるだけで、周りを温かく包んでくれた。
雅紀...
雅紀......
......//////
肩を震わして泣く俺に、
「...朝になったら、また来ます...それまで、ゆっくりお別れ...してください...」
有岡くんは、そう言うと、部屋を出て行った。