第27章 君が描いた未来
【 翔side 】
後ろ髪を引かれる思いで、安曇野を後にした。
雅紀はもう長くない...
それが分かっていたから、彼の側を離れたくなかったけど...
でも、置いてきた仕事や、患者が、
どうしようもなくなっていて...
愛する人と離れたくない思いと裏腹に、医師としての俺を待っている人がいる。
今なら...
雅紀が安定している今なら、数日離れても大丈夫だろうって。
渋々病院に戻った。
3日で帰る予定だった。
でも、いない間に溜まってた仕事の山は、なかなか俺を離さない。
俺は寝る間も惜しんで仕事をした。
1日でも早く、雅紀の元に戻りたかったから...
それでも、仕事は次から次へと湧いて来て。
やってもやっても終わりが見えず...
それでも明日にはいったん切り上げて、
また安曇野へ戻ろう...
雅紀が、ひとりで...たったひとりで、俺の帰りを待っているあの地へ...
そう思ったときは、既に、
一週間が過ぎていた。
その晩だった。
雅紀が静かに息を引き取ったと、
病院から連絡があったのは...
嘘だ。
だって、俺のこと待ってるって!!
大丈夫だから、行って来いって!!
そんなの、
そんなこと、信じられない...
雅紀が一人で逝ってしまうなんて//////
連絡してきてくれたドクターの声が、
だんだん遠くなる...
急変だったと...
延命治療は望まないという書面を預かっていたので、痛みを和らげる薬を投与し、
最後は意識も途絶え...眠るような最後だったと。
.........雅紀...
まるで、俺が帰る前に、と、急いで逝ってしまったような急変...
笑って送り出してくれた...
『気を付けていってらっしゃい』
そう笑った雅紀の笑顔が、
頭の中に広がる...
雅紀......
雅紀...
なんで待っててくれなかったの///
......雅紀///
雅紀///まさき......
「櫻井さん...こちらに、来られますか?」
おずおずと聞くドクターに、
「今から行きます」
と答えた。
早く、雅紀の側に行きたい...
それだけだった...