第26章 未来への地図
【 雅紀side 】
翔が来た。
一度は諦めたはずの...
もう二度と会わないと決めていたのに。
探して....
俺を探して、こんなところまで来てくれた。
どうしてここが分かったの?
仕事はどうしたの?
俺の病気のことは、知ってるんだよね?
いつまで、ここにいてくれるの?
.....本当は、聞きたいことは幾つもあるのに、何も聞けない。
聞いたら、君は戻ってしまう。
そんな気がして....
自分の欲深さに、呆れる。
一度は別れを決めた人...
諦めたはずの温もり...
また、欲しくなる...
もう十分だって。
たくさん貰った、その思い出だけで残りの日々を過ごせるって...
そう思っていたのに...
翔の顔を見たら、俺の心が、また彼を求めてしまう...
翔が来てくれたってだけで、嬉しくて。
「さっき、雅紀が出て来るかもしれないって教えてくれた受付のお姉さん...いつまでいてもいいって、言ってたよ~♪」
宿泊の申請を済ませた翔が戻ってきた。
黙っている俺に、
「何にも持ってこなかったんだ...着替えも、タオルも、歯ブラシも...売店って、まだ、やってるかな~?」
「......」
背中を向け、窓から外を見ながら、翔が明るく話している。
「それとも外のスーパーとか~?そんなの近くにあるのかな~?何もないよね、この辺って...」
「......翔..」
「......」
「ねえ...翔...」
相変わらず背中を向けたままの翔に、俺は手を伸ばして触れた。
「翔...こっち向いてよ...」
「やだ...」
「翔...」
立ち上がってそっと両肩に手を乗せ、肩に頭を乗せると、その肩は小さく震えていた。