第26章 未来への地図
「......」
翔...泣いてるの??
「...翔...こっち向いて?顔、見せて?」
ゆっくりと振り返った翔は、大きな目に、今にも溢れそうに涙を浮かべていた。
きゅっと唇を引き締めて、我慢しようとしている姿に、俺の胸は押しつぶされそうになる。
「翔///」
堪らず抱き締めると、翔は俺の肩に顔を埋め、声を殺して泣き出した。
......翔...ごめんね...
黙ってきちゃって...
翔の事、裏切ることになって、ごめん。
......
君を、ひとりにしてしまう俺を...
俺を...許して...
声を出すまいと、必死に耐える翔...
そんな翔を抱き締めて、俺も泣いた。
......どうして...
こんなことになったんだろう?
どうして、俺だったんだろう?
どうして...
どうして......
何度繰り返しても、何度恨んでみても、
何も変わりはしないから...
間違いだったってことにはならないから...
もう言うまいと決めたのに...
「...雅紀...まさき...まさ...」
「翔...ごめん...」
「ごめ..ん...なんて...言わ..ない..で..」
言葉にならない翔を、抱き締める俺も、言葉が出なくて...
二人で抱き合ったまま、
暫くの間、馬鹿みたいに泣いた。
我慢していた声も、いつの間にか、押さえることもしないで...
こんな年になって、誰かの前で、こんなに泣くとこがあるなんて、思ってもいなかった。
いろんな思いが交差する...
話したい言葉も、
伝えたい思いも、
今は...
今はただ、愛しい塊を胸に抱いて、
その温もりを分かち合うだけでいい...
それだけで...
明日の事よりも...
今、ここに...この場所に、君がいることだけが、俺の全てだから...