第26章 未来への地図
「あの、お願いします!会えば絶対喜ぶ筈なんです!」
「でも...規則ですから...」
久我さんは困惑顔だ。
分かってる。決まりだから...
そんな事は百も承知で、それでも言ってるんだ。
「お願いします。家族より...ある意味家族より近い存在なんです!せめて、彼に俺が来たとだけ、伝えていただければ///」
そうだよ。
雅紀が、俺が来たことを知ればきっと...
「お教えすることは、出来ませんし...
それに、相葉さんは、面会者リストにどなたも記入されていませんので...」
誰も...親の名前も書いてないのか?
雅紀////
お前そんな、たった一人でこの地で...
愕然とする俺に、久我さんは中庭を見ながらポツリと言った。
「今日は、この時期にしては珍しいくらいの暖かさですからねぇ。
患者さんたち、そろそろ散歩に出てくる時間かしら?」
散歩に...?
その中に雅紀もいるって言うのか?
見れば、車イスに乗った患者たちが、家族やナースと一緒に中庭に出て来るのが見えた。
行ってみよう。
「あ、あの、ホントにありがとう。君には感謝しているよ!」
急いで礼を言うと、久我さんはにっこり笑って、
「私は独り言を言っただけですので...」
と言った。
俺は、中庭を見渡せる長椅子に腰を下ろして、出てくる患者たちを見ていた。
雅紀が出てくるかもしれないと思いながら...
でも、中庭に散歩にやって来る患者は皆、
車イスに乗って、看護師に付き添われなければ来れないような、
所謂重症な患者ばかりで、その中に雅紀がいるとは、到底思えなかった。
....雅紀は、本当にここにいるのか?
さっきまでの確信はどこへやら、
不安しかなかった。
雅紀....
お願いだよ、俺の前に現れてよ!