第26章 未来への地図
懐かしい筈のその景色は、夏と冬とでは全く違う顔を見せていた。
あの山の麓に雅紀がいる。
何か確固たる証拠がある訳じゃないけど、俺は確信していたんだ。
俺から逃げた雅紀は...
全ての関係を断って一人で姿を消した雅紀は、本当は俺が来るのを待ってる...
そうだよな?
絶対にいる...そう信じながらも、目的地が近くなるにつれ、どうしても心がざわざわ騒ぎ出すのを抑えられない。
....もし、ここじゃなかったら?
ここに雅紀がいなかったら?
最後の望みの糸が切れてしまう。
そしたら今度は、何を頼りに探せばいいんだ?
俺の不安な気持ちを乗せ、車は目指す病院へと辿り着いた。
受付の女性スタッフが、にこやかに俺を出迎えてくれた。ネームプレートには『久我』と書いてあった。
「あの、面会を...」
「はい、面会される方のお名前とご自身のお名前をここにご記入ください。」
言われるままに面会カードに記入した。
続柄の欄に『友人』と書いた。
久我さんは、俺のカードを見ると、少し首を傾げたが、直ぐにパソコンで検索をかけた。
その間に、俺は院内を見回した。
木がふんだんに使われた、温かい感じの広々とした玄関ホール...
その真ん中の大きな円錐の柱の横に、キラキラ光る、クリスマスツリーが飾ってあった。
.....そうだった。
明日はクリスマスイブ....雅紀の誕生日だった。
バタバタしていて、うっかりしていた。
...誕生日の前日に...何て、何だかロマンチックじゃん。プレゼントは持ってないけど...
そんなことを思っていると、受付の久我さんが、申し訳なさそうに、
「すみません。ここ病院は、予め患者さまご本人が登録された方のみのがご面会可能になっております。申し訳ございませんが、それ以外の方は...」
嘘だろ?そんなこと...
それに、雅紀は俺の名前を登録してないんだ...