第26章 未来への地図
何も持たずに、着の身着のまま出掛けて来てしまった。
平日の中央道は空いていた。
穏やかな日差しが、眩しいくらいの小春日和の午後。
確かな当てがある訳じゃない...けど...
俺は確信していた。
雅紀が親父に語った『俺との思い出がある場所』
ネットでホスピスのある病院を検索していた時、何の気なしに見た病院...
長野県安曇野市にあるその病院は、白馬方面に向かう途中にあり、豊かな自然の中にある。
残された最後の時間を過ごすために、その病院を訪れる人は多いと...
その病院のHPにあった言葉が、俺の心に引っかかっていたんだ。
『降る様な星空が、どの病室からも見ることが出来ます』
安曇野.....
俺達がまだ学生だったころ、サークルの合宿で訪れた土地。子ども病院や児童施設を慰問した。
その時泊まったペンションで、夜、雅紀と二人で星を見にこっそり出掛けた。
まさに降る様な...数多の星の下で交わしたキスを、俺は今でも覚えている。
その時した約束も...
『いつかまた、二人で来よう』
そうだ...
あの時雅紀と、そう約束したんだ。
忙しい毎日の中、記憶の片隅に忘れ去られていたその日のことが...その瞬間の雅紀の顔が...
今でもはっきりと思い出せる。
また...いつか...
その約束がこんな風に叶う何て///
雅紀...
雅紀......
今、ひとりで何を思ってるの?
俺と離れたこと...何とも思わない??
......きっと一人で泣いてる。
強がって見せるけど、本とは誰よりも寂しがり屋で、ひとりが苦手なんだ。
臆病で、オバケが嫌いで...
子どもの頃から、怖い話の時は、いつも二人で手を握り合っていた。
そんな昔のことを思い出した俺は、思わず頬が緩んだ。
その頃...
目の前に、雪を被ったアルプス連峰が現れた。