第26章 未来への地図
「どうしたの??診察?」
「いや...そうじゃなくって...ちょっと気になることがあってさ。
...雅紀の事なんだ」
雅紀?...智、雅紀のこと何か知ってるの!?
「あのさ、俺、昨日偶然雅紀に会ったんだ...」
「昨日!?」
「そう。珍しいところにいるなと思って声を掛けたら、すごい驚いた顔してて...」
智が言うには、
新宿駅で昼間一人でいたこともそうだけど、何だか挙動不審で、智に会ったことに動揺してるみたいだった...と。
「顔色も悪くて、何か痩せたみたいな気がしたし...」
「......で、雅紀はどこに行くって言ってたの?」
「それがさ、『それは、言えない』っ...何度聞いても...」
「.....雅紀...」
また、繋がりかけた糸が、切れてしまうのか...と、そう思ったとき、
「でも、どっち方面の電車に乗ったのかは、分かるよ」
「えっ?」
聞けば、智は長野の松本に出張だったらしく、ホームに降りたところでバッタリ雅紀にあったようで。
「あそこは『特急あずさ』のホームだから、そっち方面に行ったはずだよ。用もないのに、大きなキャリーケース持って、あんなところにいるはずないもん!」
あずさ...山梨...長野...
長野....
「翔、雅紀...大丈夫なの?」
心配そうな彼に、
「智!ありがと。分かったよ、雅紀がいるところ。智のお陰!!またゆっくり連絡するから!!」
俺はそう言って駆けだした。
「あ、翔~...何だか分かんないけど、頑張って~!」
智の声を背中に聞きながら、俺は駐車場に急いだ。
行くべき場所が分かった。
どうして、その病院のHPを見た時に分かんなかったんだ。
雅紀が選んだ場所...
俺との思い出の...
俺は一路、冬の信州へ向けてハンドルを切った。