第26章 未来への地図
目を閉じて、どうか間違いであってくれ、と祈る俺に、
「あいつは肺癌でした。ステージはⅢ~Ⅳ...確認されただけで、肝臓と骨への転移が診られました...」
.....足元の砂が、一気に波にさらわれたような、立ってることすらままならない感覚...
「...どうして..」
「どうして言ってくれなかったんだ、ですよね?」
「.....」
電話越し、風間の声は妙に落ち着いている。
俺よりも....パートナーであるはずの俺よりも、あいつのことは分かってますから。
とでも言うように...
風間は、雅紀が自分の病院に検査に来たときの状況と、詳しい病状を話している。
でも俺は、どこか他人事のような気持ちで、それを聞いていた。
実際、そうなのかもしれない。
いざとなったときに、頼るのは...頼れるのは、俺じゃなくて、こいつなんだ、と....
「翔さん!聞いてますか!?」
「えっ?あ、ああ...聞いてるよ」
すると風間は、少し間を置いてから、
「もしかして、話してくれなかったあいつを、恨んだりしてませんよね?」
それは明らかに、責め口調で。
それに対して何も言わない俺に、風間は、
「翔さんだから!大切なあなただからこそ、話せなかったんですよ!」
「...俺だから?」
「愛する人の脚を引っ張りたくない。自分が末期癌だと知れば、あなたは何もかも放り出して、あいつの側に居ようって、そう思うでしょ?」
当たり前だ!一人になんか出来るわけがない!
「あなたがそういう人だって、あいつには分かっているから...
だから姿を消したんですよ。」
....だけど。
こんな急にいなくならなくっても...
置き去りにされた俺は、どうすれば...
「あの、風間は、雅紀の居場所、見当がつくの?」
「...残念ながら、全く。俺が、関連の地方病院紹介するって言っても、あいつ、断ったんです。」
.....雅紀....
雅紀、どこにいるんだ!?