第26章 未来への地図
それから3日後にやって来た、所謂大御所と言われる初老の俳優は、何度もチェックを通らないと入れない、特別貴賓室に入院した。
「初めまして、華岡様の担当をさせていただきます、櫻井です。よろしくお願いします。」
すると彼は、手を出して握手を求めて来た。
「櫻井翔先生だね?噂は聞いているよ。かなり優秀だそうじゃないか...」
「いえ、そんなことは...」
「ははは、こんなに若くてイケメンな先生だったとはね~。意外だね~、病気をするのも悪くない♪」
「何をおっしゃいますか...
早速、明日から検査に入りますので、今日の9時以降は水飲以外はお取りにならないように...」
「はいはい...」
華岡という俳優は、テレビで見るよりもずっと小柄だった。
その晩、遅く帰ると、ソファーで雅紀がうたた寝していた。
出来るだけ静かに起こさないようにしながら、雅紀の作ったビーフシチューを温めていると、雅紀が目を覚ました。
「あ、翔~、帰ってたの?起こしてくれればよかったのに...」
「疲れてるんでしょ?寝てていいよ!温めるくらいなら、俺でもできるし..」
「だ~め!鍋焦がしたら困るもん!」
「なんだよ~、信用ないな~」
俺は笑いながらダイニングに座った。
冷蔵庫からサラダを出している雅紀が、乾いた咳をしている。
「ねえ、まだ治らないね~?薬変えた方がいいんじゃない?何飲んでるの??」
俺の声が聞こえたはずなのに、雅紀は、素知らぬ顔でフランスパンを切っている。
「ねえ、雅紀ってば!」
「ハイ、出来たよ~♪熱いから火傷しないで食べてね!あっ、フーフーしておあげよっか?」
「...いいって...」
「ふふ、翔って、か~わい❤」
なんだか、馬鹿にされた!(*´з`)
俺たちは、今日1日の出来事を話しながら、向かい合って仲良く夕飯を食べた。
いつもの風景だった...