第26章 未来への地図
【 翔side 】
家の病院は、規模的には中堅どころだけど、
設備は大病院並みに整っていた。
親父が、そう言う最新の検査機器や治療のための設備には糸目をつけないところがあり...
まあそのお陰で、
評判を聞き付けた大物政治家や、
芸能人なんかもこっそり入院してくることも珍しくなかった。
そして今日も....
「翔、忙しいとこをすまないね」
「親父がこういう風に呼び出すって、いい予感はしませんが~」
「ははは、まあ、そう言うなよ」
この日、親父に呼ばれて、院長室に来ていた。
何でも、大物俳優が入院してくるとのこと。
肺がんのステージⅢ、手術の必要があるらしく、来てから再検査するが、恐らく緊急に手術になりそうだ。
「どうだ?受けてくれるな」
「...それって決定事項、なんでしょ?それとも断ることは出来るんですか?」
「相変わらず手厳しいな~、まあ。お察しの通りだよ。失敗は許されない...出来るな?」
「...分かりました。一度診察しないと何とも言えませんが...父さんが『俺にできる』と思ったんなら、出来るでしょう」
俺の言葉に、苦笑いした親父は、その患者の紹介状を俺に渡しながら、
「担当は...雅紀にお願いするよ」
「雅紀に??なぜですか?科も違います!」
すると、親父は窓の方を向いて外の景色を眺めながら、
「女性のナースではない方がいいそうだ...
で...雅紀なら..と。」
親父がどんな顔をして言っているのかは分からなかったが、俺は正直に雅紀は今、具合がよくないとこを告げた。
すると親父は一瞬、怪訝な表情をしたが、直ぐに、
「そうか、それなら仕方ないな...別のものにしよう」
と言った。