第26章 未来への地図
【 雅紀side 】
翔は、学会の準備の忙しく、夜も遅くなる日々が続いた。
俺は、金曜日の検査入院のために
こっそりと準備していた。
幸い翔も忙しさで、俺のことに構っていられないから、体調のことをあれこれ言われることもなくてホッとした。
『明日俺早いから、先寝てて、起きなくていいよ』
翔からLINEが入ったのは9時過ぎだった。
『了解。無理しないでね』
そう返信をして、俺も風呂に入って寝ることにした。
......明日検査だ。
悪い結果だったら...そう思うと不安で...
本当は誰かに...
翔に抱き締めて『大丈夫だよ』って、そう言って欲しかったけど。
翔の足を引っ張るようなことはしたくないんだ。
気になるからどんどん不安になるだけで、
本当はただの風邪かもしれないし...
その時。
またいつもの乾いた咳が出て、
俺は急いでティッシュを取った。
......口元を押さえて咳をしていた俺は、そのティッシュを見て愕然とした。
...血痰...
胸にも痛みが残っている。
.....長引く咳に、胸の痛み、そして血痰...
これって...
俺は身体が小刻みに震えるのが分かった。
患者さんのこんな症状を見たら、
その病名は思い当たる...
...俺が!?しかも、その病気のための症状なのか?そうだとしたら...俺...
俺は急いで布団に潜り込み、自分で自分の身体を抱き締めた。そうしないと、震えが止まらなかったから。
...翔...
翔...
翔....俺...
布団の中で声を殺して泣いた。
明日の検査で、はっきりしたら...
俺はどうしたらいいんだろう...
病気になっても尚、彼の隣に居続けることが、
俺にできるだろうか...?
考えれば考えるほど、見えない未来に絶望しか浮かばなくて...
布団の中で泣き続けていても...
翔は帰ってはこなかった...