第26章 未来への地図
【 翔side 】
今日はほぼ定時に病院を出ることができた。
こんなことは年に数回あるかないかのことで。
本当はもっと割り切ってもいいんだけろうけど。
雅紀ともゆっくりご飯を食べる日も少なくて...
夕ご飯を食べようと誘った時の雅紀の弾んだ声に、俺は胸が少し痛かった。
一緒の病院で勤務し、一緒の部屋に住み。
いつでも一緒に居れるからという関係が、逆に俺たちの時間を無くしてしまっているなんて...
「ただいま~」
玄関で靴を脱いで、リビングのドアを開けると、キッチンから雅紀が顔を出した。
「お帰り!翔...先にお風呂に入ってくれば~?
もう直ぐ出来るよ♪」
紺色のエプロンを付けて雅紀が笑った。
.....ああ、何かいいな~、こういうの。
待ってる人がいて、ご飯作ってくれてるって、幸せなことだって、改めて思うよ。
風呂から出ると、ダイニングの真ん中ににフォンデュ鍋があり、野菜やウインナーなんかが綺麗に皿に並んでいた。
「うまそっ///」
「ふふふっ、早く食べよ♪」
「「お疲れ...」」
軽くグラスを合わせてワインを喉に流し込んだ。
「食べよう食べよう!はい、ピック、どうぞ」
「うん、ありがと」
俺達はワインを飲みながら、雅紀が用意してくれたフォンデュを楽しんだ。
雅紀が少し咳をする。
「雅紀、ホントに大丈夫だったの~?何なら一回、ちゃんと検査..」
「大丈夫だよ!薬飲めばきっと直ぐに治るから...」
「でも...」
「それより...食べて、はい、エビ...」
雅紀がチーズをたっぷりつけて俺に差し出した。
「あつっ///」
「だ、大丈夫~??火傷した??」
「うん...した」
「ごめん..見せて~?」
「ほら...ここ...舐めて~❤」
そう言いながら舌を出すと、雅紀は赤くなった。