第26章 未来への地図
夕方、翔からLINEが入った。
『今日は早く帰れそうだから、外で飯でもどう?』
早く帰るなんて珍しい。
そんなら、少しでも二人でゆっくりしたい。
『ご飯の用意しとくから、家で食べよ!』
そう返信すると、直ぐに、
『了解!旨いワインでも買って帰るよ』
と返信があった。
ワインか~...
そう思って冷蔵庫を見たけど、ありきたりの材料しか残ってなくて。
俺は買い物に出かけた。
今日はチーズフォンデュにしよう!
ワインなら、これでしょ♪
さっきまでの憂鬱な気持ちもどこへやら、俺は鼻歌を歌いながら食材を吟味していて。
隣り合わせたおばあちゃんに、
「お兄ちゃん、いい人でも来るのかい?」
と言われてしまった。
「え~?はい、まあ...」
するとおばあちゃんは、
「若い人はいいね~...お幸せにね」
そう笑顔で行ってしまった。
『お幸せに』...か...
何か、素敵な言葉だな~。
何の省みも期待することなく、人の幸せだけを願う言葉。
俺もそんな風に、周りの人の幸せを願いたい。
それには、自分が幸せでなきゃ...かな~?
自分が幸せじゃないのに、他人の事なんか祈れないのかもしれない...
幸せで...なきゃ...
俺はフォンデュの材料を買い込んで家に帰り、
翔の顔を思い浮かべながら、準備をした。
そんな時間が、本当に幸せで、優しくなれる時間だった。
テーブルに茹でた野菜海老、フランスパンや蕩けたチーズが並ぶ頃、翔が帰ってきた。
「ただいま~...あ、旨そっ!」
「だ~め...手を洗ってから!」
「は~い...厳しい看護師さんだな~♪」
翔が着替えに行っている間に、俺は彼が買って来たワインをワインクーラーの氷の中に入れた。