第26章 未来への地図
【 翔side 】
この頃本当に忙しくて、ほとんどちゃんと休んだ日がないくらいだった。
半年先まで埋まっている手術の予定と、
毎日俺を頼って、遠方からやって来る患者さん...
出来るだけ、たくさんの人に希望を与えたい。
それだけで毎日を過ごしていた。
雅紀とも一緒に居るのが当たり前になっていたから、
ゆっくり話す時間さえ取れないことも多かった。
「翔...ご飯食べてった方がいいよ...」
「あ、うん...忙しいんだ...外来の前に病棟に行かなきゃ...」
「そう思ってラップサンドにしといたよ!
食べながら行けば~?」
「お~、流石雅紀!ありがと..」
俺は雅紀にお礼のキスをした。
「雅紀...ちょっと熱っぽいんじゃない?」
「あ~...少し咳が出るんだ...大丈夫だよ」
「咳?ちょっと診せて...」
俺は雅紀の喉を確認しようとしたけど、雅紀は俺からサッと離れてしまった。
「大丈夫だよ~!今日内科の三宅先生に診てもらうよ...」
「そうか...薬出してもらって。休んでて...」
雅紀は今日明けで休みだった。
顔色は、いつもと変わらないけど...
心配そうな俺を気遣ってか、雅紀は両手を握ってガッツポーズを作って見せた。
「絶対、受診してね!」
「分かったよ...心配性だな~、翔は」
「当たり前だろ~!風邪だと思って馬鹿にしてると..」
「もう!早く行かないと!」
そうだった!
俺はもう一度、雅紀に触れるだけのキスをしようと腰を引き寄せると、雅紀は顔を背けた。
「風邪ならうつしたら大変でしょ?」
「雅紀...」
「よくなったら、いっぱいしてね❤」
そう笑った雅紀の笑顔が、不思議といつもと違って見えた。そんなはずはないのに...
俺は雅紀にもう一度念を押して家を出た。
...三宅ドクターに、雅紀が来たか、昼に確認しよう。