第24章 一緒に生きるということ
【 雅紀side 】
今までで一番緊張した日...
それは、人生最高の日になった。
翔と生きていく...
翔の隣にずっといる...
そう決心するまでは、正直かなりの葛藤もあった。
翔と居るということに疑問を感じていたわけではない。
ただ、俺なんかが彼と居ていいのか??
という繰り返される自問自答...
翔にはそんな心の葛藤を、話したことも相談したこともない。
彼は俺とは立場が違う。
翔はいづれは大病院を背負って立つ跡取りだ。
臨床でも優秀で、今後の医学界にはなくてはならない人材のひとりだ。
その気になれば、どんな素敵な女性でも手に入れることができるはずの人だ。
その彼が俺のことを愛してくれている...
ただただ、誠実に俺だけを思ってくれている...
それは奢りではなく、そう感じていた。
でも...
だけど...
俺では、彼の遺伝子を残してやることができない。
そんなの分かり切ってたことだ。
俺達は男同士で、どうしたって不可能なことがある訳で。
そんな気持ちをいつも心の奥に持っていた。
自分が翔なしでは生きていられないと...
そう思うその裏には、俺じゃダメなのに...
という引け目を、いつも感じていた。
だから...
今日、翔の親父さん、お袋さん、修や麻衣ちゃんに認めてもらえたことは、俺にとっては越えられない壁を超えた瞬間でもあった。
......好きでいていい。
俺でも...俺が翔の隣に居てもいい...
法的な文章や紙きれで公約されるよりも、
俺にとっては嬉しい事だったんだ。
「もう、泣くなってば。そんな顔じゃ、どこにも寄れないじゃんか...」
帰りの車の中。
そう優しく笑う翔に、俺は増々号泣だった。