第24章 一緒に生きるということ
【 翔side 】
「やあ、いらっしゃい、雅紀くん。
...お帰り、翔」
親父は、俺たち二人の前に腰かけながらにこやかにそう言った。
「こ、こんにちはっ!ご無沙汰してました!」
雅紀が弾かれたように立ち上がって、深々と頭を下げた。
もうそれだけで、いつもと違う感が溢れてる。
今かな?
どんなふうに言い出したらいいかと一瞬考えた俺に、先に口を開いた親父は、
「先日学会で坂本先生にお会いしたぞ。翔のことをとても褒めていてね...何だか気恥ずかしかったよ」
当たり障りのない話題を振られたので、それに返す。
「ああ、そのこと先生も言っていました。」
「お前のカテーテルの腕前もどんどん上がっていると言っていた...まあ、お世辞だと思うけどな...」
「酷いな~、お世辞なんて...」
「まあ、お世辞だとしても、嬉しいもんだよ...」
「それはそうと、山口教授はお元気か?次期学部長確実だそうじゃないか...」
「あぁ、それはきっと...」
その時俺は、雅紀が話にも入れずポツンとしていることに気付いた。
あ...そうだった。
今日は山口教授の大躍進の話をするために来たんじゃない...
「親父」
俺は思い切って、話の腰を折り改めて親父に向かい合った。
すると親父は、黙って俺の言葉を待っっている。
「俺が病院に帰る話だけど。」
隣で、雅紀が小さく息をのむのが分かった。
親父は何も言わない。
「雅紀を一緒に連れていくってこと、快諾してくれてありがとう...
そのことなんだけど...」
ダイニングの修も、こっち見て俺の話を聞いている。
キッチンから、母親も出てきて、今ここの空間にいる住人全てが、俺の次の言葉を待っている。
よし。
俺は覚悟を決めた。