第23章 命の重さ~second~
涙が零れ落ちそうになり、
俺は慌てて天を仰いだ。
泣いちゃダメだ...
俺は奥歯を噛みしめて、必死に涙を堪えた。
空には、鳥が一羽ゆっくりと旋回していた。
人が一人死んでも、何も変わらない...
世界は、何事もなかったかのように回り、
時間は、無情に流れていく...
その時。
「...翔...」
「...雅紀...」
雅紀はゆっくりと近付いてきて、
黙って俺を抱き締めてくれた。
「なんで...」
「だって翔は、患者さんが亡くなるといつもここに来て、一人で泣いてるだろ?」
「...泣いてなんか..」
「翔...泣いてもいいんだよ...悲しいときは泣いていいんだ。
泣きたいのを我慢してばかりいると、心が壊れちゃうよ?
俺の胸で泣きなよ...」
「...何だ、よ...それ...」
そう笑った...
笑ったのに、
笑ったはずなのに、
大粒の涙が零れ落ちて、雅紀の白いシャツを濡らした。
一度溢れてしまったら、後はもう堰を切ったように後から後から流れて、止めることなんか出来なかった。
「..わあぁ.ううっ..あああぁ..」
雅紀が黙って背中を擦ってくれている。
その掌の優しさに、温かさに、
ますます泣けてきて、
俺は、子どものように声を上げて泣き続けた。
「....助けたかったんだ..」
「うん」
「元気に...なってたのに...」
「うん」
「..太郎..と..暮らすって..」
「うん」
「昨日..まで...笑ってたのに...」
「うん」
「...何も..して..やれなかった...」
「それは違うよ、翔!」
「.....」
雅紀の強い声が、初めてはっきりと否定した。
俺は、ゆっくりと顔を上げて、
泣きはらした目で、雅紀を見た。